「本当に?」

目を瞠る彼にしっかり頷く。

その瞬間、大好きな人の胸の中に包まれた。

今では安心する香りが鼻腔をくすぐり、長い腕が強く身体を抱きしめる。


「……好きな人と気持ちが通じるというのはこんなに嬉しいものなんだな。澪、ありがとう。二度と離さないから覚悟して」


独り言のようにどこか物騒な台詞を口にしながら、ほんの少し私の身体を離す。

向き合って見つめ合った目には魅惑的な光が宿り、抗えない色香が漂っていた。


そっと唇が私の唇に触れる。

伏せられた細く長い睫毛を一瞬見つめ、目を閉じる。

キスがどんどん深くなって食べられてしまいそうな感覚に陥る。

唇の感触以外なにも感じられなくなる。何度も角度を変えて触れ合う長いキスに、心も頭も痺れて真っ白になっていく。

大好きな人の温かな気持ちが身体中に染みわたって胸の奥が幸せな気持ちでいっぱいになる。

下唇を食むようにキスをして、そっと解放される。

頬が熱くて恥ずかしさで目を逸らそうとすると、再び軽いキスが落とされた。


「可愛い。もうこのまま今すぐ帰りたい」

およそ副社長らしからぬ言い方に、どう反応していいかわからない。


この人どうしちゃったの? こんなに甘い台詞を言う人だった?