エリート御曹司と愛され束縛同居

おにぎりは冷めているせいかどこか味気ない。

帰宅しても当たり前のように温かな食事が用意されているわけでも洗濯物や片付けが済んでいるわけではなく、今頃になって母の有難さが身に染みる。

実家が懐かしい。

改築工事が終わってもあの場所にはもう私の居場所はないし、戻れない。


会社員なのだから異動があるのは当然だし、異を唱えるつもりはない。

受付業務は元々ピンチヒッターのようなもので、現在二十五歳の佳奈ちゃんをはじめとした同僚は全員、私より年下だ。

それに将来を考えるとこの異動が嫌だからという理由だけで会社を辞める気にはならない。

ただどうして親会社に異動なのかがよくわからない。

課長は光栄な話だよ、と付け加えていたけれど、まったく嬉しくない。

同じような穏やかな毎日の繰り返しを望んでいるのに、特に多くを望まないのにどうしてこんな話になってしまうのだろう。

情けないとわかっていながら気持ちが落ち込むのを否定できない。