エリート御曹司と愛され束縛同居

「……なにを考えている?」

帰りの車中でふいに問われた。

「あの方のお気持ちはご存知だったんですか?」

社用車でする話ではない、と思いながらも口にせずにはいられなかった。曖昧に眉尻を下げる表情は無言の肯定だ。

「……桃子さんの気持ちには応えられない」

切なさの滲む目には明確な意思が宿り、その強さに圧倒されてしまう。

「俺が選んだのはお前だ。気にする必要はない」

感情の機微に敏い人だから私の心中を推し量ってくれているのだろうとわかる。

けれど素直に受け入れらず、心の中でなにかが引っかかってしまう。

身勝手とわかっていても、叶わないと思っていた恋心を受け入れてもらえてとても嬉しい。

桃子さんの気持ちに応えてほしいとは願えない。

けれど取引先として伺った場で、ましてや恋敵ともいえる私がいる前で容赦なく断られた気持ちを想うとなんだかやるせない。

「……気の毒、とでも思っているのか?」

困ったように溜め息を吐きながら再び問われた。逡巡しながらも小さく首を横に振る。

「すべての人の恋がうまくいくなんて思っていません。でももっとほかに言い方や答え方があったのではないかと……」


ああ、なにを言っているんだろう。


うまく気持ちが、考えがまとまらない。

私が言うことではないとわかっている。

自分が優位に立っているような物言いをしたいわけではないし、偽善でもない。

ただもう少し優しい状況にはならなかったのかと思うのだ。

もしかしたらその立場になっていたのは私だったかもしれないから。