エリート御曹司と愛され束縛同居

手を振って下車し、改札を通り抜ける。幾つかのお洒落なカフェやお店の灯りが夜道を照らしている。


実家の改築工事の間、私だけ駅近マンションを借りて半月。

引っ越し荷物はあらかた片付いた。通勤時間は以前に比べ随分短縮されて、起床時間は少し遅くなった。

でも、今でもまだこの風景にはなれない。生まれた時からずっと利用していた実家のある最寄り駅に微かな郷愁を感じてしまう自分がいる。

マンションに隣接している商業施設内のレンタルショップで、以前より観たかった映画のDVDを借りたけれど気持ちはまったく盛り上がらない。

異動の件は他言しないように言われているので、誰にも相談できない。ましてや両親にも言えない。


部屋着に着替え、食欲もあまりわかない私は商業施設内で買ってきたおにぎりを食べようとL字型をした広い黒の革張りのソファに座る。

座り心地の良い、見るからに高級品であるソファの値段は想像もつかない。

この家具の所有者で九重グループの人間である家主、九重(はるか)さんは相当仕事ができる女性なんだろう。私とは全然違う。