彼は不思議そうにしながらも靴を脱いで。試着室へと入ると、私は見られないようにすぐにカーテンを閉めた。



「あのね、気持ちは本当に嬉しい……!でも、私、服はいらないよ!?」


店員さんに聞かれないように、できるだけ小さな声で言う。


「服ないと不便だろ」
「制服さえあればだいたいなんとかなるし、寝る時は浴衣貸してもらってるから大丈夫!」


「はあ?なに言ってんだ」
「私、お世話になりっぱなしだし、これ以上なにかしてもらうわけには……!」


さすがに悪い。
お世話になっているうえに、またさらに買ってもらうなんて……。
しかも、絶対高い服屋だし!



「俺の嫁になるんだし、まじで気にすんなって。せっかく店貸し切ったんだからおまえも好きな服選べよ。好きなだけ買ってやるから」


聞こえてきた言葉に、耳を疑った。


……“貸し切った”?
そういえば、私たち以外のお客さんを見てない、ような……?


ってことは、本当の本当に貸し切り!?
私の服を買うために、わざわざ!?


……この高級感溢れるお店を貸し切るのに、いったいいくらかかったのか。
一般人の私には予想がつかない。