月夜に笑った悪魔



「いつも、体張って私を守ってくれて本当にありがとう」


改めて、彼に感謝を伝える。


自分がこういう経験をしてわかったのだが、かなり痛い。


撃たれるのは、それはもう想像以上に痛かった。
それなのに、暁は私を守るために何発も銃弾を浴びて……。



「俺はいいって──」


私は彼の首に手をまわし、抱きついた。


自分のことは気にするな、とでもいうような言い方。
暁はいったいいつから自分のことを大切にしてくれるのか。


「暁は自分のこと大切にできないから、私が大切にするの。私は、暁が無事でよかったよ。
好きな人が無事で、すごく安心した。暁はもう充分すぎるほど傷ついたんだから、私にも守らせてほしい」


力を込めて抱きしめる。
強く、強く……。


抱きしめれば首元に顔を埋めるカタチとなる彼。
さらさらの黒髪が当たって、息がかかって……なんだかゾクゾクする。