私は覗き見るのをやめて、頭をしっかり座席シートの裏へと隠して息を殺した。
「わたしはシノと行ってくるから、巧はここにいてね」
紫乃が車から出ていくと、未玖ちゃんは巧くんに小さな声でひと言。
それから、車をおりていく未玖ちゃん。
閉められた車のドア。
月城組の本家にとうとう来てしまったと思ったら、心臓がさっきよりもはやく動く。
「組長と若頭はおられますか!!」
車の外から聞こえてくるのは、紫乃の大きな声。
……外は、今どんな状況になっているのか。
……紫乃は大丈夫だろうか。
外はやけに静かになって、心配と不安で心はいっぱい。
そして数秒後……
「……未玖様もいるのになにしてるの。銃をおろしなさい」
聞こえてきたのは、また紫乃の声だった。



