月夜に笑った悪魔




病室の窓から見えていた、大きな木。


私は窓枠から身を乗り出して、少し離れたところにある木へと精一杯、手を伸ばした。


「美鈴ちゃん!?」
「美鈴、危ないよ!?」



とめられそうになったが、私は両足を木の上に乗せて、外へ。



まさか、人生で2回もこんなことをするとは思わなかった。
……木を伝って、上から下へとおりるなんて。



1回目の時は、命の危険があったから……火事場の馬鹿力というものでなんとかできた、けど。


今は、足がガタガタ震える。
下を見れば怖すぎて体が動かなくなってしまいそう。



でも、必死に体を動かして太い木の幹にしがみついた。


上から聞こえてくる、心配する声。
私はできるだけ目の前の木の幹だけを見つめ、幹を伝い下へと少しずつおりていく。