月夜に笑った悪魔



振り返れば、暁のお父さんは酸素マスクをはずして無理やり上体を起こそうとしていて。


「無理するな……!」
「まだ起きるのは早いですよ!」


良典さんと蒼真が必死にとめていた。
けれど、なんとか暁のお父さんは体を起こし。


ベッドに座ると、私を手招きで呼んだ。


私はすぐに呼ばれたほうへと足を進めると。



「……本当にすまないね。好きな女の子には優しくしろ、と昔から言っていたつもりだったんだが……暁はどうも素直な子じゃなくてね。美鈴ちゃん、暁のことをどうか嫌いにならないでやってくれ……」


暁のお父さんは、私と目を合わせるとにこりと笑った。


どこか少し、さっきよりも苦しそうな顔。
……酸素マスクをはずしたり、無理に体を起こしたりするからだ。


まだ、目覚めて時間はあまりたっていないだろうに……!