月夜に笑った悪魔



込み上げてくる不安と恐怖。



少し想像しただけでも、じわりと目に涙が浮かぶ。


手に持っていたものを離して、暁の頬へと触れ……。



「……行かないで」


彼をまっすぐに見つめて声を出した。


「まだ行かねぇよ」


すぐに返ってくる返事。
……そういう意味じゃない。

私が言いたいのは今のことじゃなくて。




「明日……行かないで」


言い直して、彼を見つめる。


私が泣いてどうにかなることじゃない。
だから、泣くのは必死に耐えた。



「心配?」


暁はなんて言うのかと思えば、そう聞いてきて。
私はその言葉にこくんと頷く。


心配しないわけがない。
心配しすぎて……どうにかなってしまいそう。




「おまえが心配することじゃねぇよ」


浴衣の中へと忍び込んでいた手は出されて、ぽんぽん頭を撫でてくれる。