……この男は、どうしてこんなに余裕なのか。
私が優勢になれると思ったのに、これじゃ結局いつも通り。
近づいてくる、整った顔。
キスをされるのかと思って目を瞑ると……彼の唇が触れたのは、おでこ。
「助けるの、遅くなって悪かった。……ケガ、平気?痛くない?」
目を開けると、見えたのはなんだか悲しそうな彼の表情。
彼の手が私の右頬に優しく添えられ、気づいたことがひとつ。
自分の頬には、大きめの絆創膏が貼ってあった。
これは……あれだ。
ナイフがかすった時の……。
「痛くないし、大丈夫だよ。それより暁は……ケガ、大丈夫?」
暁は何発か銃弾が当たって血が出ていたはず。
それが心配になって言えば彼は、「へーき」と軽く返した。
彼の平気は、あんまり平気じゃないような気もするけど……。
「暁……いつも助けてくれてありがとう」
目を見て返せば、左頬にキスをひとつ。
それから、強く抱きしめられて……。
「……まじで心配した。おまえ、丸一日寝てるし」
聞こえてくる声に、耳を疑った。



