月夜に笑った悪魔



彼が取り出したものは、ピンクと白の刺繍糸で編まれた……ミサンガ。


それはいつか、暁のマンションで見たものだ。



「それ……」
「おまえが昔くれたやつ。ずっとマンションの部屋に置いといたんだけど、病院にいるとき吉に持ってきてもらった」



その言葉で、確信に変わった。
……やっぱり、それは昔私があげたものだった。





「暁……好き」


まっすぐに彼を見つめ、また声を出す。


「知ってる」
「……大好き」


「わかってるって」
「…………」


「……なんでむくれてんだよ」



ふくらませた頬。
その頬をムニっと引っ張られた。


痛くはない、けど……なんでさっきから“好き”って言ってくれないのか。


私は、暁の口からちゃんと“好き”って聞きたいのに。
……言ってくれないと、不安になる。