月夜に笑った悪魔



「……風邪、うつっても知らないから」


ちらりと暁を見るけど、彼は「うつらねぇよ」とさらっと返してくる。


……なにを根拠に言ってるんだか。




「……バカは風邪ひかないって言うもんね」


ふふっと笑うと、再び暁の顔が近づいて。
おでこにキスをひとつ。


「それ言う元気あるなら早く寝てなおせ」



また、優しく頭を撫でてくれる手。


その手はあまりにも優しくて、心が温かくなる。




「暁……好きだよ」


私は、ゆっくり口を開いた。
それを伝えると、彼は「素直」と笑う。



だけど……好き、とは返してくれない。



「……暁は、私のこと好き?」
「俺もおまえと同じ気持ち」


「……好き?」
「おまえが思ってるよりも、ずっと」


彼は自分のポケットへと手を突っ込み、取り出したもの。
それを私に見せて、優しく笑う。