月夜に笑った悪魔



「……しょーがねぇな」



聞こえてくるのは彼の声と、袋を拾う音。

諦めてくれた、かと思えば……。




勢いよく布団は捲られ。
私の顎をぐいっと持ち上げると、口に差し込まれた親指。


口をこじ開けられ、その開いた口の間から粒の薬を入れて……。
顔を近づけられると、重なった唇。




瞬間、口内へと入ってくる水。

それを飲まないと苦しくて、ごくごくと動く喉。
流れ込んできた水を一気に飲んだ。



「……っ」


口内から消えた薬。
それは、水と一緒に飲んだみたい。


……口移しで飲ませるなんて。
……なんて強引な人なんだ。




「よくできました」


唇は離れ、瞳に映るのは口角を上げる彼の姿。
口の端から垂れた水を指で拭ってくれると私から離れて、布団をかけなおす。