彼の腕の中は、ちゃんと温かい。
胸に耳を当てれば、心音が聞こえる。


……ちゃんと生きてる。




瞬きをすれば、とめどなくこぼれ落ちる涙。

声を出そうと、口を開いた時に──






聞こえてくる足音。


それは、こっちに近づいてきていた。



……授業開始のチャイムが鳴ったから、先生の可能性が高い。


誰かに見られたら厄介だ。
今は授業をサボっているわけだし、暁は制服ではなく黒服姿だし。




「あかつ──」


小さく声を出せば、暁はすぐに私から離れ。
手を強く引っ張ると、下駄箱の裏へと隠れた。