月夜に笑った悪魔



心は焦るばかり。


ただ隠れるだけなんて、すぐ見つかる。
なにか、なにかしないと……。


私にあの男をとめるまでの力はないから、なにか時間稼ぎになるようなことくらい……。







頭をまたフル回転させて、よく考えようとした時になにかに躓き。


体が前に倒れてしまった。


「……っ!」



じんじん痛む膝。
転んでいる間にも、減っていくカウント。


気にしている時間さえなくてまたすぐに起き上がる。


走ろうとすれば、見えた薄暗い光。
それはスマホの画面の光で、ポケットの中から出てしまったようだ。



それを手に取ると……思いついたことがひとつ。


私はスマホを操作して、茂みの中へと隠した。



そしてポケットへと手を突っ込み、隼人からさっきもらった懐中電灯を出すとライトをつけて。


ごめん、と心の中で謝りながらそれを思いっきり遠くのほうへと投げた。