月夜に笑った悪魔



離れたくない。
できることならずっと抱きしめられていたい、けど……課題をやらないと本当に留年するかもしれないし。




「……ごめん。課題やってもいい?このままだと提出期限に間に合いそうになくて……早くやらないと」


背中に手をまわしたくなる気持ちをぐっと抑えて、声を出した。

けれど、返ってきた言葉は。


「ヤダ」


そのひと言。


ヤダと言われましても……。


「私、今ままでにもたくさん赤点とってて、留年するかもしれないの。だから課題はぜったい提出したくて……」
「いいじゃねぇか。留年すれば俺と同じ学年だし、同じクラスになれるかも」


さらっと返される。


なにもよくないんだけど!?


暁は留年という重みをわかっていないのか。
留年するということは今まで同級生だった人たちが先輩になって、後輩が同級生になるということ。


そんなの、ぜったいまわりから注目されることまちがいなしじゃん。
今でさえ悪目立ちしてるのに、もっと悪目立ちするよ!?


「何言ってんの!」
「一緒に卒業しようぜ?」


「やだよ!?」


彼の胸を強く押す。
けれど、離れる気配はない。