「いや、本当にいいよ……!」
「月城組に美鈴が連れていかれたって暁に知らせたら……暁、すごい心配そうな顔してすぐ走っていったの。あんな表情は……芽依だったらしてくれなかった」


「そんなことは……」
「美鈴には敵わないって思ったけど……暁のこと、傷つけたら芽依がもらうからね」


芽依はまた顔を上げると、今度はにこりと笑う。


まるで、小悪魔のような子だ。
本当に油断も隙もない。


「あげないよ!?」
「芽依、もう家に帰るから元気でね」


彼女は手を振って、荷物を持って出ていく……かと思えば、急にピタリと足をとめて。



なにかを思い出したように私のほうへと戻ってくると、私の胸を触った。


「がんばって成長させて、ここだけでも美鈴に勝つから」


最後にそう言うと、今度こそ走って部屋を出ていく。




……いい子ではあるんだよな。
今度会った時はちゃんと仲良くなれるといいな。


そう思いながら外へと出て、芽依を迎えの車まで見送った。