月夜に笑った悪魔




彼は私のところへとまた来ると両腕をつかみ、今度は強引に立たせると。






「おまえバカか!2番とかなに言ってんだよ!?
俺は最初からおまえしか興味ねぇし、おまえしかいらねぇんだよ!!」


まっすぐに目を見つめられる。



その声を聞いて、心臓が大きく鳴り響くのがわかった。



触れられているところが熱い。
……心臓の音がうるさい。



暁は私から手を離すと、右手に視線を落として。
ハンカチを緩く巻き付けると、ケガしていないほうの手をとって走り出した。


引っ張られるように動く足。




……もう、とまろうとは思わない。


さっきの言葉が今でも胸の中に響いて、体が熱いんだ。


少し痛いくらい強く握られた手。
私の前を走るこの大きな背中。



……さっきの本当なのかな。
わからないけど……嘘だったら絶対にタダじゃおかないんだから。



ドキドキしながらそのまま走って、モール内へ。


エレベーターに乗らず、脇にある誰もいない非常階段を上る。


ひたすら足を動かして、上り続け……。

何階かわからないところの、踊り場で急に立ちどまった。