月夜に笑った悪魔



どうしようもない不安に襲われて、下を向くと……。


なにかが落ちた音がして、そのすぐあとに聞こえてきた鈍い音。





音がしたほうへと目を向ければ、見えた光景にびっくり。



スーツを着た女性が地面に背中をつけるかたちで倒れていて、その横には暁。
女性は痛そうに顔を歪めていて、傍らにはナイフが落ちていた。




……暁が、倒したんだ。




「美鈴、あとで話すから今は早く来い!!」


彼は私のほうへと戻ってくると、もう一度腕をつかむ。


まだ、諦めてない。
暁は私のことを置いていこうとしたわけじゃない。


……なんで。
なんでそんなに私に構うの……。


「美鈴!!」


何度目か、彼が私を呼べば……






「一条暁!!」


走ってくる足音と共に聞こえてきたのは、男性の大きな声。


今度は、黒服姿の男性に見つかった。




すごいスピードでこっちに向かってくるから暁はまた私の手を離し。


殴りかかってくる男性の拳をひらりと避けて、あいた脇腹に蹴りを入れる。





それは見事に入り……

──ドンッ!と大きな音をたてて、男性は近くの車に体をぶつけた。