「芽依のほうが大切なら、いちいち私に優しくしたり、助けに来たりもしないで……」
続けて小さな声を出す。
涙はとまらなくて、次々に溢れてとまらない。
「おまえ──」
暁は口を開いて、不自然に言葉を切る。
なにかと思えば、彼はぱっと後ろを振り向いた。
「ずいぶん余裕そうね……!」
彼の後ろ、数メートル先。
そこにいたのは、さっきまで私にナイフを突きつけていた月城組の女性。
……見つかってしまった。
「来い!!」
彼は立ち上がって私の腕を強く引っ張る、が……私は立ち上がらなかった。
「美鈴!!」
名前を呼ばれるど、それでも立ち上がらない。
「もし捕まっても自力でなんとかするからほっといて!2番目の女なんかに構わないでよ……!」
吐き出すように声を出せば暁の手は私から離れて、背を向ける。
……私が望んだこと。
望んだことなのに、その背中を見て胸が苦しくなった。
……せっかく来てくれたのに、行ってしまう。
また、1人になる。



