月夜に笑った悪魔




できるだけ声を殺して、ゆっくり呼吸。



……見つかりませんように。
そう願うばかり。


ガタガタ震える体。
心臓が大きく動いて、その音すらこの場に聞こえてしまいそうで怖い。


もし今見つかったら、と考えると怖すぎる。
体力の尽きた私は今度こそ月城組に連れていかれるんだ。


それでさっきの女性が言っていた通り、私はクスリ漬けにされちゃうんだ……。
それで、いつか殺される。

……絶対そう。





耳をすましてよくまわりの音を聞く。
それに集中していると、ふと目に入った自分の右手。


ナイフをつかんだから、思ったより血が出ていた。



……痛い。




……暁のバカ。


暁が私のこと拾ったくせに、ちゃんと面倒見てくれないからこんなことになるんだ。


拾って、嫁にするって言ったんだったらちゃんと面倒見てよ……。


あんまり大切じゃなくても……芽依のほうが大切でも、私のこともちゃんと見ててよ。
……バカ。



じわりと目に涙が浮かぶ。
泣いてる暇なんてこれっぽっちもないのに。



慌てて手で涙を拭えば──







「っ!!」


急に、大きな手に口元を覆われた。