月夜に笑った悪魔



「待てやゴルァ!!」


聞こえてくる怒声。


私は車の間を通って通って、とにかく足を動かす。


手が痛い。
絶対血が出ているけど、そんなのも気にしていられない。


つかまったら終わりだ……!







広い駐車場を一心不乱に走る。

そうしていれば、しだいに追ってきている足音が小さくなっていった。


私は、長距離走は大の苦手だけど短距離走はそれなりに得意だったりする。


50メートル走のタイムは、8秒台前半。
まぁ、得意と言っても平均より少しはやいくらいだけど……。


はじめて、心の底から短距離走が得意でよかったと思った瞬間。



あがる息。
得意なのは短距離走のみだから、体力は本当にない。


モール内に入りたいところだけど、このまま行ってもつかまる可能性が高いし……いったん隠れるか。


隠れて、少しずつ入口に近づいて一気に走ろう。





そう思い、私はすぐに車と車の間でしゃがみこんで身を隠した。