月夜に笑った悪魔




車が多いから、車と車の間を通ったり隠れたりすればなんとか逃げられそうな予感。



あとは、この突きつけられたナイフをどうするか。


銃とか持ってたらかなりやばいけど、この人たちだってそんなに目立ちたくはないはず。


目立つのを気にしていなければ、もっと強引に私のことを担いで運んだりとかしそうだし……。
少なくとも人がいるところでは撃たれることはない……と思いたい。



人間って、どれくらい刺されてどのくらい血が出たら死んじゃうんだろう。
ちょっとくらい平気?


いやいや、さすがに刺されるのは怖すぎるな……。



……でも、逃げるためにはちょっとくらいのケガは覚悟しないと。

逃げないと、死ぬかもしれないんだから……!











覚悟を決めた私はナイフの位置を確認。



──次の瞬間には、そのナイフをぎゅっと右手でつかんで腹部に刺さらないようにガード。


それと同時、女性の足を思いっきり踏んずけて。


「……っ!」


力が緩めばナイフを離し、私はすぐに走った。


「あの女、よくもっ……!追って!」


女性の大きな声。
後ろから瞬時に追いかけてくる足音が聞こえてくる。