「こっちよ」
誘導されて、乗せられたのはエレベーター。
扉が閉まり、2人きりに。
いったいどこに連れていかれるのか。
誰かと合流されるとさらに逃げられなくなるから、その前に逃げたいところ。
「死にたくなければ変なことは考えないほうがいいわよ」
ちらりと女性を見上げれば、気づかれてしまう。
ナイフをさらに近づけられるから、私は力を抜いた。
「……どこの組?なにが目的なの?」
聞いたところで教えてくれるかはわからないが、聞いてみる。
敵の情報は少しでも知っておきたい。
「月城組、って言ったらわかるかしら」
次に耳に届いた声は、まさかの。
“月城組”……!
その組は、一条組と敵対する組だ。
私はよく覚えている。
和正がそこの組の下っぱとして働いていて、蒼真からも話をたくさん聞いたから。
一条組と月城組は深い因縁があって、月城組が暁の両親を……。



