「どいて……!」


必死に言っても離れてくれる様子はなくて。


こうなったら……。

私はまた、彼の足を思いっきり踏んずけた。


けれど……彼にダメージはちっともない。
少しも離れてくれないし、痛がるどころかむしろなんか笑ってる。


……ドMかと思うほど。



「凶暴だな」
「凶暴な女が嫌だったらさっさとどいて!」


「その凶暴な女が好きだからどかねぇ」
「…………」


なんなんだ。
……また、さらっと“好き”って言うとか。


ほんと、意味がわかんない。
だいたい私のさっきの言葉、ちゃんと聞いてた!?



「気にしてた?」


急に聞かれる。


「……なにが」
「俺が他の女といたから気にしてた?俺のことばっか考えてた?」


「……はい?」


なんだその質問。
そろそろ本気で怒るよ?





「芽依のこと、ちゃんと話すから聞けよ」


ぎゅっと拳を握れば、頭の上に置かれた手。


……芽依のこと?
彼の胸を押す手をピタリととめれば。







「暁……っ!」


聞こえてきた声。