月夜に笑った悪魔



背中に手をまわされて、強く抱きしめられる。


私を包む体温、甘い香り。

……数秒遅れて脳が現状を理解し、心臓が暴れ出す。


こ、こ、これはなんだ……。
な、なにして……!?



「ずっと抱きしめたかった」


耳元でそっと聞こえてくる声に、さらに心臓の鼓動が加速。


腕の力を強くされるから、少し苦しいくらい。



でも……いやではない。



「今時間あるし、俺もちゃんと動けるし……この間の続きしよ」


甘く誘うような声。


“この間の続き”
というのは……夜桜の倉庫でのあれのことだろうか。


あの時、麻酔でちゃんと動けない暁とキスして、いろいろ聞いたっけ……。



瞬時に思い出してしまい、熱くなっていく体。


……せっかく忘れかけていたのに。
夜桜の倉庫での出来事から、暁は忙しくてこんなに触れられることもなかったから……やっと毎日あの日のことを思い出さずにすんでいたのに。


また、記憶が鮮明に蘇る。

唇の感触も、体温も、しっかり……。