月夜に笑った悪魔



「すずちゃん?」


急に足をとめれば、振り向く。


別にこっちを見ているわけではない。
まだ目も合っていないのに、足を動かそうとしてもなぜかやっぱり動けない。


……なんでだ。
挨拶しなくちゃなのに……。









ただその場に固まっていると。




「お久しぶりです。急にどうしたんですか?」


急にこの場に聞こえてきた、暁の声。


家の門のところには、黒服姿の暁。
帰ってきたばかりみたいで、ジャケットを片手に持っている。


あとから見えたのは、蒼真と……もう1人。
40代くらいの、男性。






「……暁、おまえに話があってな」


如月組の組長は、暁のほうを見る。


「奇遇ですね、俺もお話があって近々行こうと思ってたところです」
「……話?」


「はい。すげぇ大事な話なんで、俺からここで言ってもいいですか?すぐ終わりますので」
「……あぁ」




そういえば、暁が敬語を使っているのを見たのははじめて。

そんなことを思ってる暇もあまりなく、彼はなぜかこちらに足を進めてきて。





私の隣まで来ると、ぐいっと肩を引き寄せた。
それから。


「良典(よしのり)さんにもちゃんと紹介してませんでしたね」


彼が目を向けたのは、さっきまで彼といたと思われる40代くらいの男性。
ぱちりと目が合えば、


「紹介します。こちらは日南美鈴、俺の婚約者です」


如月組の組長、そして“良典さん”という男性に向かって紹介された私。