月夜に笑った悪魔



暁は……どれほど苦しい思いをしたんだろう。
私より年下なのに、いったいどれだけいろんなものを背負っているんだろう。


私には計り知れない。




「美鈴ちゃん、もしまた暁が暴走したらとめてあげてくれないかな。もちろんできる範囲でいいし、俺や組の誰かを呼んでくれるだけでもいいからさ……。
俺は、ぜったいに暁を人殺しにはしたくないんだ」


そう言った蒼真は、真剣な表情。


その声に、私は大きく頷いた。


暁と出会ってそんなに日付けはたっていなくても、彼のことをぜんぶ知らなくても、私は彼の優しいところと温かさを知っている。


そんな人を、私だって……人殺しにはしたくない。
たとえ、彼が復讐を望んでいたとしても。





「ありがとう」


微笑んで返されたあと、疑問に思ったことがまたひとつ。


今乗っているこの車はどこに向かっているのか。
怒られるわけでも、殺されるわけでもないのなら、どこに連れていかれるんだろう。


「ね、ねぇ……」


気になりすぎて声をかけて見れば、彼は優しい表情を向ける。


「なに?」
「話変わるんだけど……今はどこに向かってるの?」


「夜桜の倉庫だよ」


さらっと返された言葉。