「動くなって言ってんだろうが……!!」
和正の荒々しい声のすぐあと、耳に届くのは乾いた音。
銃口から確かに出る、硝煙。
それから……頬から血を流す暁。
銃弾が、暁の頬をかすった。
……もう少しズレていたら、直撃してたかも。
……命を落としていたかもしれなかった。
見ているだけでも怖い。
暁が死ぬところなんて見たくない。
私には恐怖心しかなかったのに……
──彼が口角を上げたのを私は見逃さなかった。
暁は、一気に和正との距離をつめる。
彼が動けば2発、3発、とまた響く銃声。
暁はそれを怖がることなく、避けることもせず、まっすぐに和正へと向かい……拳銃を蹴り飛ばすと和正の頬に自分の拳を入れた。
響き渡る、鈍い音。
その一撃で、地面に倒れる和正。
あまりにも一瞬の出来事。
一瞬すぎて……頭が追いつかない。
黒服姿の男2人は、ガタガタと体を震わせて怯えている様子。
数秒後には、はっと我に返ってやけになったように暁に殴りかかり。
暁はその拳をひらりと軽く避けて、2人もあっという間に倒した。



