和正は私の上からどくが、恐怖は消えない。
むしろ、死ぬかもしれない……と思うと恐怖心が強くなる。
ドクドクと嫌な音をたてて動く心臓。
私の手足をおさえる手も離されて、今は誰も私の体に触れていない状態。
ゆっくり目を開ければ、3人は少し油断しているようにも見える。
運がよければもしかしたら逃げられるかもしれない……が、縛られてもいないのに体がまったく動かなかった。
……逃げなきゃ。
逃げなきゃ、死ぬかもしれないのに……!
近づいてくるエンジン音をただ聞いていることしかできなくて。
やがて、バイクのエンジン音はすぐ近くでとまる。
この場を明るく照らすライト。
その光が眩しくて、思わず目を細めた。
ライトはすぐに消え、エンジンがとまる。
再び薄暗くなって目が慣れない。
静かになって……さらに心臓が早く動くのがわかった。
「これはこれは、わざわざ来てくださりありがとうございます」
和正が明るいトーンを出して、バイクへと近づいていく。



