「美鈴、おまえに会うのは今日でもう最後になるだろうから全部教えてあげようか」
彼はしゃがみこんで。
私へと手を伸ばし、頬に触れる。
そして、次に放たれた言葉は……。
「美鈴には今まで嘘ついていたけど……俺は、会社員なんかじゃない。月城(つきしろ)組の下で働いてるんだ」
衝撃的な言葉に、頭がフリーズ。
和正と出会った頃……一緒に暮らす前から、私は彼から会社員をやっていると聞いていた。
一緒に暮らすようになってからも、彼は平日は毎朝出社してて……。
同僚と飲み会も行ってて……あれ?浮気相手、和正の初恋の人が入社してきたって……?
会社員じゃない、ってことはせんぶ嘘……ってこと?
え?
頭の中がごちゃごちゃ。
混乱して、なにがなんだかさっぱりわからない。
っていうかなにさ、月城組って……。
そんな、“組”ってヤクザみたい──。
私はそう思った直後、黒服を着た男性2人に目を向けた。
やっぱり……いかにも普通じゃない2人。
その2人は、まるでヤクザ。
え?でも、そんなことって……。
“月城組”というのがヤクザだとしたら、和正はその下で働いてるって言ったことに……。



