月夜に笑った悪魔



「な、なに、和正……あの人たち、誰?」


身の危険を感じて後ろにさがろうとしたが、和正は私の腕を離してくれない。


……な、何が起こって?
おさえろ、って……私を!?


なになになに、なにがどうなってるの!?
和正!?




急すぎる出来事。
私は動けないでいれば、腕を強く引かれて床へと投げ飛ばされた。


「……っ!」



体を打ち付けて、痛みが走る。
早く起き上がろうとすれば、私の上に黒服姿の男が1人またがって。


もう1人の男は、私の口元に布を当てる。



「んーっ!!んー!!」


やばい、と心から思っても声は出ない。
体も動かせない。




「うるせぇなぁ!静かにしろ!」


荒々しい声が聞こえるのと同時、私の頭に突きつけられたものは……黒くて、艶のあるもの。


それは──拳銃。
それから、今の声の主は──和正。


……はじめて聞いた、怒声。
3年間一緒にいたのに、今のような声をはじめて聞いた。


それがあまりにも衝撃的で、私の体は凍りつき……なぜか、突然やってくる眠気。




な、なに……。


必死に意識を保とうとしたが、それはできなくて……私の意識はプツリと切れた。