月夜に笑った悪魔



「……行き場のない私を、優しい人が拾ってくれたの。これはその人からもらったものだよ」


暁のことはちゃんと答えられなくて、それだけ答えれば。


「ちょっと……見せてもらってもいいかい?」


なぜか、和正の視線はずっとバングルに。


「?」


見せる、って……バングルを?
そんなに気になるもの……?


よくわからないが、私はそっとバングルをしている腕を和正のほうに出した。

彼は私の腕を引っ張って……真剣に見つめる。



つかまれた腕は、力強くて痛い。


「和正、痛い……」


声を出すが、私の声は届かず。





「……本物だ」


和正は小さくつぶやくと、口角を上げた。


「え?」


……本物?
なにが……?




「美鈴、おまえには本当に感謝してるよ」


和正は、私にとびっきりの笑顔を向けたあと。
「こいつをおさえろ!」、と大きな声を出した。



その直後、部屋の奥から出てきた黒服姿の男性2人。
その2人は……明らかに普通じゃない雰囲気。