月夜に笑った悪魔



「……いつから浮気してたの?」
「その人と再開したのは去年の4月で……関係を持ったのは、今年のはじめくらいから……」


「……そっか」


返す言葉が見つからなくて、それしか言えない。




聞いた言葉は、思った以上に辛かった。
心の奥深くに刺さって、痛い。

……苦しい。


涙がぽたりとこぼれ落ちて、慌てて手で拭う。


だめ……泣きたくない。
泣いたらもっと惨めになる。


私はまた腕につけているバングルを強く握った。




「でも俺は、浮気したことをずっとずっと後悔してて……!失ってはじめて本当に大切なものに気づいたんだ!俺は、美鈴がやっぱり1番──」
「一緒にいるのは、もうお互い辛いだけだよ。だからさよならしよう」


和正の言葉を遮って、声を出す。
震えてしまう声。

それでも、必死に伝えた。




「……美鈴の友だちに聞いたよ。美鈴は、もうほかに好きな男ができたんだって?そのバングルも、男から?」


私が握っているバングルに視線を落として、じっと見てくる和正。



“友だち”というのは……由美のことだろう。
和正と話したみたいだから。