「だったらやっぱり同じだよ!」

 こんなところに共通点を見つけてなんだか嬉しくなる。

(そっかぁ。アルさんチョコが大好きなんだ。……あれ?)

「そういえば、ラグが前にそのお菓子がすっごく好きな人がいるって。もしかしてそれって」
「あいつのことだ。昔っからティコが無くなると大騒ぎしやがって」

 心底鬱陶しげに言うラグ。

「そうだったんだ。私てっきり……」
「あ?」
「う、ううん。何でもない」

(……あんなに怒ってたから、てっきり女の子かと思ってた)

 フェルクでの彼の行動を思い出しながら私は心の中でこっそり呟いた。と、その時だ。

「おーい! こっちだこっち。遅いぞー!」

 声の方を向くと、すぐそこの店の前で派手な衣装に身を包んだアルさんが笑顔で手を振っていた。
 この短時間で完全に街に溶け込んでいるアルさんに小さく驚きつつラグの後に続く。

 怒声が響くだろうと予想はしていたが、ラグは近寄りざま無言でアルさんの顔面に拳を突き出し流石にぎょっとした。しかしアルさんはその拳を難なく掌で受け止め言う。

「なんだよいきなり。びっくりすんだろ~」
「こっちの台詞だ! いきなり飛び降りやがって!」

 怒鳴りながらラグはアルさんの手を乱暴に振り払った。

「仕方ねぇだろ~? ティコが食べられねぇって知って居ても立ってもいられなかったんだって。お前だってこないだカノンちゃんが見つからなくっでぇ!!」

 悲鳴を上げアルさんはしゃがみ込んでしまった。……ラグの蹴りが脛に入ったようだ。

「私が、なに?」
「何でもねぇ!」

 ラグの顔が心なしか赤い。と、背後からその答えが返って来た。

「カノンとあのグラーヴェ兵を追っているときにな、そいつもビアンカから飛び降りたんだ」
「え?」
「そうそう、俺と同じで居ても立ってもいられなかったんだよな?」
「うるせぇ!!」

 しゃがんだままこちらをにっこり見上げたアルさんに、ラグはもう一度はっきりと赤い顔で怒鳴った。

 ――ラグが取り乱したとは聞いていたけれど、そのときのことだろうか。

 だとしたら、とても嬉しい。

「ありがとう、ラグ」

 私も少し照れながら言うとラグは一瞬だけその赤い顔をこちらに向け、すぐに視線を戻しアルさんの脳天に拳を振り下ろした。
 それを慌てて避けつつアルさんはぴょんと立ち上がる。

「あっぶね! ったく、先輩は敬えっていつも言ってるだろ~っと、そうだそうだ。お前その格好じゃ暑ぃだろ? 俺がコレ買っといてやったから着替えちまえよ」

 ラグは差し出された包みを乱暴に受け取り中を見た。

「カノンちゃんとセリーンの分も買っといたから。きっと似合うと思うぜ」

 ウインクしながら手渡されお礼を言ったが、すぐに後悔することになる。