『なら、伝えに行ったらどう?』



『あぁ、そうするつもりだ』



『そう。それじゃ、頑張って』



唇を噛み締めて背中を見せる。



『チナツ』



『なに?』



振り向いたら泣きそうで、
絶対に振り向いてはいけない。



『正直俺は迷ってる。
この気持ちを伝えていいのか
相手の邪魔になってしまわないのか』



『それで?』



『チナツ、君ならどう思う。
俺は好きで好きで、その人のことが大好きで
練習に身が入らないほどその人のことが好きで
プロ失格だと分かっていても直せない


そんな俺でも告白していいんだろうか』



そんな、そんな好きな人がいるなんて
知らなかった。



そんなの、始めに言って欲しかった。



そしたらこんな辛い思いしなかったのに



あぁ、ダメだ



せっかくさっき泣き止んだのに
また涙が溢れてくる。



『好きにすればいいじゃない!


そんなに好きで大好きで!
愛している人がいるなら!!


相手のことばかりじゃなくて!
自分の好きという気持ちを
押し殺さないでいいように
自分に素直になって言えばいいじゃない!!』



やけくそになって後ろを振り向く。



グイッ



振り向くと同時にレオに腕をひかれる。



ポスンとレオの腕の中に飛び込む。



『チナツ。
好きだ。大好きだ。
愛してる!』



言葉が出なくて目を見開く。



『どうしようもない程君が好きで
どうしようもない程君に惹かれていて
どうしようもない程君に恋している!』



『え?ちょ、え、』



レオの腕の中からレオを見ようと顔を上げる。



っ!!!



そこには、
顔を真っ赤にさせて必死な顔をしている
レオの顔が間近にあった。



『チナツ』



スっと顔が近づいてきて



唇に柔らかい感触をする。



それはすぐに離れて
暖かい空気が触れる。



瞳の中には暖かい色が溶け込み
それが向けられているのが自分だと思うと
顔が赤くなるのが分かる。



キス、された。