14.つながってしまった事実

翌朝、朝食ビュッフェを一緒に食べに行った翔は、言葉通り本当に昨日のことなんか全くなかったかのように普段通りだった。

それこそ私の勝手な夢だったのかもしれないと思うほどに。

朝から大皿にカレーを大盛りにして食べている彼を見ながらそんな食欲がどこから来るのかと感心する。

私も食べるのは好きだけど、昨日のことがあったからか今一つ食欲がないっていうのに。

「ん?何?」

クロワッサンを食べながらまじまじと見つめていたら急に視線を上げた翔と目が合った。

アーモンド型の目を見た瞬間、昨晩のキスを思い出して顔が熱くなる。

「べ、別に」

慌てて喉にひっかかりそうになったクロワッサンをオレンジジュースで流し込んだ。

「昨日のこと?」

それなのに、彼の方から昨日のことを切り出す。

あらためて切り出されると、一気に鼓動が激しくなり体中が熱くなっていく。

天井まで全面ガラスのこのレストランは、朝の光がまんべんなく差し込んで自分の感情まで相手に伝わってしまいそうなほど明るい。

「全部忘れて」

「忘れてって……」

あんな色っぽいキスをしておいて、忘れてなんて。

忘れられるわけがない。

それに、私も翔への気持ちを確信してしまったんだもの。

「忘れろなんて、無責任か」

翔はそう言うと皿の上にスプーンを置き、ナフキンで口元をぬぐうと椅子の背にもたれた。