11.決意

姫路から無事帰途に着き、祖母は翌日から再び病院に戻った。

再入院後、すべての祖母の検査の数値がよくなっていることに担当医が相当驚いていたらしい。

母は、「退院できる日が近いかもしれないわね」なんて喜んでいた。

病は気からというけれど、本当にそうだ。

祖母にとっては病院から離れ、家族と過ごすことが一番のお薬かもしれない。


そして、翔はというと......。

姫路から帰ってもう一週間以上も経つのに珍しく何の連絡もなかった。

忙しいだけでなく、敢えて私と距離を置いてるような気がしてならない。

姫路では、私の知らなかった彼の一部を見たような気がする。

思い返せば思い返すほど、敢えて見せた意味深で曖昧な彼の言動の中に翔の迷いを感じていた。

きっと私と同じように、このままでいたいのにいられない何かが翔の中にも蠢いている。

だから、きっと翔は今後悔して私と距離を置いてるんじゃないかって。

でもまぁ、よくよく考えればお医者だものね。忙しくて当然なわけで、そんな深い意味はなく、単に連絡取れないだけなのかもとも思ったり。

竹部さんほどではないにしたって、紘一さんも言ってたように学生時代、相当優秀な成績を修めていたみたいだから、きっとT大病院でも活躍しているはずだ。

連絡がないまま、松山行の日は刻々と近づいている。

このまま翔は私に連絡せず、一人で行っちゃうなんてことないわよね。

私だって、松山城見たいんだから。

翔と二人で行くことに関してはともかくとして……。

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そんなある日、更衣室で久しぶりに萌と一緒になり飲みに誘われた。

萌から誘ってくるなんて初めてじゃないかしら。

この間、会社を辞めようと思うって言ってたよな。
そのために準備してることがあるとも。

きっと決意が固まったんだわ。

会社に萌がいなくなるのは寂しいけれど、今のままじゃきっと萌は萎れちゃう。

萌の決意を全力で応援してあげなくちゃ。