「……ねえ、美織。私は一体どうしたらいいと思う?」


お弁当を見ながらポツリと呟いた夏歩に、美織がスマートフォンから顔を上げて「ん?」と首を傾げる。


「それって、津田のこと?なに、夏歩はまだ鍵を取り返そうと頑張ってるの?向こうは返す気なんてさらさらないわよ。もう諦めたら」

「そんな簡単に……。だって家の鍵だよ?他人が持ってていいものじゃないでしょ」

「別に悪用されてるわけでもないんだし。むしろ」


美織は、夏歩の前にあるお弁当をスッと指差す。言いたいことはよくわかった。


「今日も美味しそうなそのお弁当は津田が作ったのよね?」

「……まあ」

「朝ご飯は?」

「……津田くんが」

「昨日の夕飯は?」

「……それも、津田くんが」


今日の夕飯も津田が作りに来る予定ですとは、言わないでおく。