津田の言う通りなのかもしれないけれど、だからってどうなのだと思う。


「はい、なっちゃん。目が覚めたならさっさと起きて支度して。朝ご飯の準備はもう万端だよ」


相変わらず夏歩の睨みなど軽くスルーの津田は、言いながら夏歩の上からどいて、そのままベッドからも降りてキッチンに向かう。

その背中をしばらく布団の中で睨みつけていた夏歩は、枕もとのスマートフォンを充電器から引き抜いて時間を確認し、それからむっくりと体を起こす。

物凄く余裕があるとまではいかないけれど、それでも朝ご飯を食べてから出られるだけの余裕はある。

でももし津田がいなかったら、いつまでも布団の中でうだうだとして、結果遅刻ギリギリに飛び起きる自分の姿が容易に想像できた。

運良く遅刻は免れる時間帯に目が覚めても、朝ご飯を食べる余裕なんて当然なくて、バタバタと支度をして慌ただしく家を出たことだろう。

そうならずにいられたのは津田のおかげだが、だからって津田がいてくれて良かったとはならない。そう思ってしまったら負けだ。