「おーい、なっちゃん。アラーム止めてからもう三十分も経ったけど、まだ起きなくていいの?そろそろ起きないと遅刻しちゃうんじゃない」


夏歩はもぞもぞと布団の中に潜り込み、両手で耳を塞ぐ。


「朝ご飯も出来たよー」


すると今度は布団の上から体を左右に揺すられる。
夏歩は手足をキュッと体に寄せて丸くなることで、その揺れに耐えた。

わかっている、そろそろ起きなければとは思っている。

でも、ぬくぬくと心地いい布団の中から出たくない気持ちもまたあって、そちらの方が強くて、中々抗えないのだ。

そんな夏歩に向かって、布団の上からため息が一つ落とされる。


「全く、寝ぼすけにもほどがあると思うよ、なっちゃん」


ため息にも、そのあとに続いた言葉にも無反応を貫いていると、やがて体にずっしりとした重みを感じた。


「……んん」


何かに押し潰されているような、物凄い圧迫感に思わず呻き、夏歩はこれまでずっと閉じていた目をようやく開ける。