「でも、他の男の前では借りて来た猫みたいに大人しいのに、俺にだけはそうやって素で接してくれるの、特別感があって凄く嬉しいよ」

「……っ!!それは別に、津田くんが特別ってことじゃなくて、津田くんがムカつくから取り繕う暇もなく素が出ちゃうだけで」


はいはい、今日のところはそういうことにしといてあげるよ。とどこか上から目線で津田が言う。

それにまた夏歩は反発したけれど、最後まで津田の余裕ぶった態度も表情も崩すことは出来なかった。
そして鍵もまた、取り返すことは出来ないまま


「明日の朝は、何が食べたい?」


当たり前のように、津田が問いかける。


「また来る気なの……」


うんざりしたように夏歩が声を上げても、もちろんと言いたげに頷いて


「これからは出来るだけ毎日来るよ。でないとなっちゃん、すぐ部屋の中散らかすし、洗濯し終わった物は床に投げておくし、朝昼晩と出来合いのお弁当とかお惣菜しか食べないからね」


そう言ってヘラっと笑った。