はっきりと、きっぱりと、夏歩はお断りの言葉を口にする。

こんなにもはっきりと言い切ったのだから、微塵の誤解もなく夏歩の気持ちは津田に伝わったはず。


「なっちゃん……」


そう、思っていたのに――


「ほんと、素直じゃないよね。まあ、そんなところも可愛いんだけど」


不思議なことに、微塵も伝わっていなかった。


「ひとの話聞いてた?」

「ちゃんと聞いてたよ。仕方がないから今日のところは帰ろうか。あっ、駅裏にある公園の前にクレープの移動販売車がいるの知ってた?ちょっと寄って行こうよ」

「はあ?ちゃんと聞いてたなら今の流れでなんでそういう話になるのよ!」

「レッツゴー!」

「あっ、こら!ひとの鞄勝手に持って行くな!!」


この日、この瞬間が、全ての始まり……。