魚も味噌汁もご飯も、全てが胃に収まったところで二人分の食器を下げた津田は、それを洗いながらヤカンでお湯を沸かす。

洗い物を終え、沸かしたお湯でココアを作って戻って来た津田は、「はい、どうぞ」と夏歩の前に湯気の立つマグカップを置いた。

夏歩が持ち手の部分に指を入れて持ち上げたタイミングで、津田が口を開く。


「なっちゃん、ちょっとだけ“はい”って言ってみて」

「……“いいえ”」

「“はい”だってば。もう、ほんとに素直じゃないんだから」

「突然“ちょっと言ってみて”なんて言われて言うわけないでしょ!どうせまた姑息なこと考えてるくせに」


そんなこともないよ、などと言って笑う津田は心底疑わしい。


「嘘つき」


睨みながらポツリと零した夏歩に、津田も負けじと言い返す。


「それを言うならなっちゃんもだよね。俺のこと好きなのに、好きじゃないって嘘ついてる」

「……はい?」


険しい顔のままに首を傾げた夏歩に、「だってそうでしょ」とさも当たり前のように津田は言う。


「なっちゃんは、俺のことが好きだよ」