「色々中途半端に余ってたから、使い切っちゃいたくて」


夏歩は、ようやく一口目を飲み込んで口の中が空になったところで


「やっぱり使いまわし」

「だから、使いまわしとか言わない」


苦笑する津田の台詞を聞き流しながら、夏歩は二口目のピラフを口に入れた。

そこで津田もきっちり「いただきます」をしてスプーンをピラフに差し込み、掬いあげる直前で思い出したように夏歩を見た。


「そう言えばなっちゃん、“いただきます”してないよね」


もう遅いということで、その指摘は聞こえなかったことにした。
食べながら、なんてことない話をして、時に夏歩が声を荒らげ、津田はそれを笑って受け流す。

二人共締めのピラフをすっかり胃の中に収めてお皿が空っぽになったところで、津田は当たり前のように皿を重ねて持って立ち上がった。

ココアは先ほど飲んだから、津田は洗い物の前にヤカンを火にかけることはしない。
部屋の中に水の流れる音だけが響いて、やがてそれもやむと、津田が戻ってくる。