「はい、締めのピラフ」
キッと津田を睨みつけ、まだ怒っているんだぞと主張しておいてから、夏歩は無言で差し出されたスプーンを受け取る。そのまま、仏頂面で食べ始める。
本気で怒っていることを主張したかったら食べなければいい話なのだが、そうもいかないくらいにいい香りが漂ってきていた。
これもまた腹立たしいことではあるけれど、香りによって刺激された食欲は、食べないという選択肢を拒否する。
ピラフに突っ込んだスプーンを持ち上げれば、バター香るご飯の中にシーフードミックスと思われる具材が見え隠れしていた。
「スパゲティの時の使いまわしだ」
「使いまわしとか言わないの」
口に入れて、噛みしめる。悔しいけれど、やっぱり美味しい。
飲み込むより先に二口目をスプーンで掬ったら、今度はそこに鶏肉が載っていた。シーフードに合わせて小さめに切られた鶏肉が。
口の中がまだいっぱいだったので無言で津田を見たら「ん?」と首を傾げ、夏歩とスプーンを交互に見てから、察したように「ああ」と頷いた。



