一人楽しそうな津田に夏歩が怒りの声を漏らすと


「なっちゃんは時々口が悪いよね。ダメだよ、この野郎なんて言ったら」


津田にやんわりとたしなめられる。


「そこまで言ってないでしょ!」


言おうとはしたけれど、言い切る前で止めたのだから未遂だ。


「まあでも、昔から他の男の前だと借りて来た猫みたいに大人しいのに、俺にだけはそうやって素で接してくれるの、特別感があって凄く嬉しいよ」


猫被りななっちゃんもそれはそれで可愛いから捨てがたいとこもあるけど、なんて言って笑う津田を、夏歩は鋭く睨みつける。


「それは別に、津田くんが特別ってことじゃなくて、津田くんがムカつくから取り繕う暇もなく素が出ちゃうだけだから!」

「はいはい、今日のところはそう言うことにしといてあげるよ」


余裕の表情で夏歩の鋭い視線を受け流し、津田はいつの間にか飲み干していたチューハイと、テーブルの上の他の空き缶を一度に持って立ち上がる。

すぐに戻ってくると、今度は空いた皿も片付けて、綺麗になったテーブルに炊飯器で保温していたピラフを並べた。