「ほんと、好きだよね、ココア」
笑みを含んだその声に、夏歩はチラッと視線を送っただけで答えはしない。
それこそ“何を今更”という感じで、夏歩のココア好きは今に始まったことではない。
いつ好きになったかなんてことは覚えていないけれど、それが津田と出会うより前だったことは確かだ。
濃い甘さが口の中に広がると、その瞬間夏歩の頬がふっと緩む。それを見た津田もまた、満足そうに笑う。
ほんと、可愛い……との呟きは、聞こえなかったことにした。
幸せそうにココアを堪能する夏歩と、それを幸せそうに見つめる津田。何ともほのぼのと和やかな時間が流れる。
二人の間に会話はないけれど、お互いにお互いの幸せを堪能しているところなので、沈黙も気にはならない。
ややあって、先に幸せな時間から現実へと戻って来たのは夏歩の方だった。
テーブルを挟んだ向かい側、自分を見つめる男の姿が目に入って、ココアからそちらに意識が移る。



