「見るからに飲んだ感じだったからね、そりゃあトイレと大親友にもなれるわよ」


お昼休み、会社の休憩室のテーブルを挟んで向かい合い、夏歩が休みの間に起ったことを話すと、パックの野菜ジュースにストローを差し込みながら呆れたように美織が言った。


「とりあえず、何もなかったみたいで良かった。まあ何もないとは思ってたけど。これで、津田がどれだけ夏歩を大事に思ってるかがわかったわね」


どういうことかと聞いた夏歩に、美織は一旦野菜ジュースを吸い込んでから口を開く。


「だって夏歩、記憶がなくなるほど酔っ払って、もうとんでもなく無防備で、言ってみれば手を出し放題な状態だったのよ。津田にしたら絶好のチャンスじゃない」


恐々と「何の……?」と聞いた夏歩に、美織はあっさりと「既成事実を作る」と答えた。


「そうなれば、晴れて、ようやく、津田は夏歩と付き合えると。それどころか、付き合う過程すっ飛ばして、結婚までいってたかもね」


恐ろしいことを何ともあっさりと言ってくれる美織は、固まる夏歩を眺めながらストローを咥える。


「……いや、それは……なんて言うか、ほら……えっと……流石に、ないんじゃないかな。津田くんだってそこまでは……たぶん……」

「津田だってあれでも男だけど?」

「それは……そう、だけど……」


ごにょごにょと歯切れの悪い夏歩をしばらく眺めて、美織は「ふーん」と意味ありげな相槌を打つ。